先日、「サンダーバード55/GOGO」を映画館で観てきました。元の放映もリアルタイムな世代ではないですが幼いころに再放送を見ていて、いまでも大好きです。ブレインズが発明したスペシャルなロケット、メカを駆使して国際救助隊(=トレーシー一家)が世界中の(時には宇宙の)困難をレスキューする映像作品です。ミニチュアと人形を駆使した「スーパーマリオネーション」という手法で制作されているのも特徴。
映画の感想はといえば、少し前にテレビで放映していた「サンダーバード ARE GO」でCG版を見慣れていたのもあって、やや隔世の感を覚えたところもありますが、懐かしみもあってまずまず面白かったと思います。ペネロープさんがフィーチャーされすぎているかなとは思いましたが。
さて本稿では、せっかくなので「サンダーバード」を題材にして知的財産制度を説明するとどんな感じになるか調整してみたいと思います。特許庁のサイトなどでよくある「自動車」や「バイク」を題材にしたアレです。サンダーバードはいずれも公開から何年も経っていて新規性がなかったり、そもそも実現性がわからなかったりしますが、「もしサンダーバードを考えだしたら」という感じでお付き合いいただければと思います。
特許・実用新案
特許は「発明」を、実用新案は「考案」を保護する制度で、いずれも技術的なアイデアを対象としています。発明と考案の違いは、求められる進歩性と程度(発明の方がより高度なものを求められる)とされています。
サンダーバード2号は、胴体の中央部にサンダーバード4号などが格納されたコンテナ(ポッド)を収容して、そのコンテナが胴体の一部を構成するという画期的なビジュアルで人気です。実現性はさておき、コンテナが胴体の一部を構成する点でいえば、よけいな外装などを作る必要がなく、軽量化や製造コストの抑制にも効果があるかもしれません。このようなポイントが「技術的なアイデア」となります。
特許をとるときは、「サンダーバード2号」という全体(製品全体)を出願するのではなく、そこに用いられている技術を出願します。したがって、コンテナの収容機構の他にも、パイロットであるバージルが搭乗する際に天井に入り口が開くシステムも出願できるかもしれません。さまざま技術的なポイントが特許化されることで、製品のアイデアが多角的に保護されます。
なお、もう1点、特許と実用新案の違いをいうと、特許は物・方法・物の製造方法という3類型の発明について権利が付与されますが、実用新案は物(物の構造等)についてのみ認められています。したがって、適切なコンテナの選択方法、のような方法は特許でしか権利化することはできません。
意匠
物の外観を保護する制度として意匠があります。サンダーバードのロケットやメカたちはいずでも個性的なフォルムをしており、デザインとしても保護に値します。
注意が必要なのは、意匠法は「工業上利用可能な」デザインを対象としており、ある程度量産できるものを想定しています。したがってサンダーバードのような「一点物」は審査で拒絶される可能性があります。とはいえ機械ですので量産できないということもないと思いますし、問題にはならない気もします。ちなみに一点物のデザインについては、著作権で保護できる可能性があります。
余談ですが、意匠権を取得する際には「物品」を指定する必要があります。サンダーバードの場合は「ロケット」でしょうかね。権利侵害を問うときには、デザインの類似だけでなく、指定した物品との類似も判断材料になります。たとえば、ロケットの意匠の権利があったとして、他社がそのロケットにそっくりな「おもちゃ」を勝手に販売した場合、デザインは類似でも物品が非類似となり、「侵害ではない」という判断になり得ます。そのような展開が想定される場合には、おもちゃについても権利化を図ったり、著作権での保護を考えたりします。
商標
商標は、ブランドを保護する制度です。国際救助隊が「サービス(役務)」に該当するのか怪しいところですが、仮にサービスだとするとその名称やロゴを登録することができます。IRのロゴなども該当するでしょう。
今では立体形状、色彩、音響など、さまざまな形態の商標が登録できるようになっています。日本では作業着が登録されているケースもあり、国際救助隊のユニフォームを登録することも可能でしょう。ただ、他社と区別できるほどの特徴がなかったり、紛らわしかったりするようなものは登録することができません。
公開制度
これらの知的財産の権利を取得する場合には、公報にも注意です。公報は、(1)権利を公に知らしめることと、(2)知的財産の利用を促進することを目的として特許庁から発行されます。したがって、活動の動向が公に知られてしまうリスクがあり、特に特許や実用新案は技術の内容まで公開されてしまうので、フッドのような敵対関係にある人物に知られたくない場合は注意が必要です。
また、特許と商標は、権利を取得できるかどうかにかかわらず、出願すれば原則公開されてしまう点も要注意です。